皓星社(こうせいしゃ)図書出版とデータベース

第12回 リニューアルされたNDLサーチを使ってみる――蔵書目録と総合目録をプラス

小林昌樹(図書館情報学研究者)

■要するに国会と全国の蔵書データを合わせたシステム

1月1日に能登大地震、翌日羽田空港で旅客機炎上と、2024年は年始から驚いたが、うっかり1月5日に国会図書館(NDL)のNDLサーチがリニューアルするのを忘れていて、やっぱり驚いた。

【図12-1】新NDLサーチ

ネットでもけっこう驚いている向きがあったので、無関係な私が説明するのもいいかもしれないと思った。というのも、NDLはお役所の一種でもあるので(本当は国立図書館)、「正しすぎる」言い方をしてしまう結果、ふつうの人によくわからない説明をしてしまう傾向があるからだ。

新しいNDLサーチは、NDLという巨大図書館の蔵書システム(旧NDLオンライン)と、都道府県立図書館47館の「総合目録」(旧NDLサーチ)を合わせたものなのだ、歴史的には。それに旧NDLサーチにおまけで付いたCiNiiブックスや、別にあったリサーチ・ナビなども一緒に引けるようになっている。さらにおまけでNDLデジコレの全文検索も自動でしてくれる。

 

もともと2つの違うシステムだったのは、目的が異なるシステムだったからで、異なるものを一緒にしたのを「便利」と捉えるか「不便」と捉えるかは難しいところだ。ただ、多機能になってゴチャゴチャせざるを得なくなった分、最大限、デザインでカバーをしているように見える。

しかし、私だったら、やはりこれを使う場合には、その来歴を考えて、次の3つの目的を意識しながら使うとよい気がする。

a.全国図書館の総合目録として(旧NDLサーチの機能)

b.国会図書館の蔵書目録として(旧NDLオンラインの機能)

c.全国書誌の主題索引として(「見たことも聞いたこともない本を探す」機能=旧NDLオンラインの機能の一部)

上記3つの目的以外にも、

d.APIを通じて書誌データをもらって自分のソフトで活用する(旧NDLサーチの機能)

があるのだが、これは普通の探索者には無縁なのでここでは扱わない。

 

本講では、a,b,cの順でNDLサーチの使い方を見ていくが、特にcの部分をくわしく説明したい。というのも、真の調べものというのは、「見たことも聞いたこともない本を探す」ところから始まるからだ。まず、aやbとしてNDLサーチを使う分にはさほど難しくないので先に説明する。

 

■a. 総合目録として(使う)

レア資料――主に単行本――を探す場合に従来、みなが参照してきたのが「総合目録」、略して「総目(そうもく)」と日本の図書館業界で言われてきたもので、本当の名前は「union catalog」、つまり、「連合」目録と訳すべきだったカタログである。多数の図書館が相互に所蔵データを出し合い、1箇所で検索できるようにしたものが総合目録で、これはつまり、レア資料が、日本中ないし世界中でどこにあるかを知るためのツールだった。ふつうの本なら何もこのようなものを検索する必要はない。例えば岩波新書あたりなら、近場の図書館の新書コーナーに並んでいる(はずである)。

だから、この目録に出たからといって、すぐに使えるというものでは元々ない。基本的に所蔵館を見つける機能しかないので、所蔵館が判ったら、その図書館へ行って個別に苦労するという段取りになる。

総目としてNDLサーチを使うにはどうすればいいか? ――何もしなければよい。最初の初期画面の(総合)検索ボックスに、タイトル、著者名などキーワードをぶち込んで検索すれば、あとはサーチが自動で、全国どこかの図書館に該当するものはないか、NDLにないか探してくれる。タイトルも著者名も固有名なので、ノイズも多くはなりすぎないだろう。

試しに、私が5年前に出したレア資料『ピンバイス40年史』という同人誌が、どこかの図書館に所蔵されていないか見てみよう(「ピンバイス」とは親がやっていた模型店の名前である)。

実は最近『ピンバイス46年史』も出したので、ここでは広めに「ピンバイス」だけを検索語としてサーチに投げてみる。すると【図12-2】の結果を返してくれる。

【図12-2】NDLサーチを「ピンバイス」で検索した結果一覧

 

いっしょに無関係な『最新微小異物分析技術』『歯科医学大事典』といった本がヒットするのは、それぞれの本のデータにおまけで付いている目次データに「ピンバイス」という言葉が入っているからだ。ピンバイスとは、実はピンのようなドリルを付けて極小の穴を開けるのに使う工具のことなので、分析技術や歯科で使われるのだろう。

【図12-2】を見ると判るが、サーチはデジコレ全文と連動していて、自動的に同じ言葉がヒットした場合、最初の数例を表示してくれる(さらにおまけでNDLワープ――これは国会図書館でやっているお役所系アーカイブ――も引っかかれば出る)。役に立つこともあるだろう。

だがここでは、あくまでレアな同人誌がどこにあるかを確認しておきたいので、さらに詳細画面を開いて確認する【図12-3】。

【図12-3】『ピンバイス40年史』の詳細画面

すると、NDL東京本館、NDL関西館、神奈川県立川崎図書館にありそうなことがわかる。CiNiiリサーチにも所蔵があると出る。これは図書館名でなくデータベース(DB)名なので、さらに「この本の所蔵を確認」をクリックして進んでみると【図12-4】のように、新しい別DBの画面に切り替わる。これはCiNiiリサーチという別組織の別のDBである。『ピンバイス40年史』が京都大学と一橋大学にあることが判る。

【図12-4】CiNiiリサーチの『ピンバイス40年史』データ

なにやら屋上屋を架すようだが、最初に言った通り、ユニオンカタログというものは、総合的に「統合」しているわけではなくて、データを出し合って「連合」するものなので、このようなデータの連携ができていれば本来よいのである。

◯ログインするとさらにおまけ所蔵情報が出る

以上はログインしないで出る基本機能らしいのだが、ユーザIDを取ってログインすると、おまけでさらに所蔵情報を出してくれる。「よく利用する図書館」という一覧がそれだ【図12-5】。

【図12-5】ログインすると「カーリル」データも参照される

見ると、たしかに私がたまに使う図書館のデータが出てくる。NDLとは別会社の「カーリル」という総合目録DBのデータで私が登録した館が出ているようだ。ただ当面の問題として、明らかに所蔵があったNDL東京本館、神奈川県立川崎図書館で「所蔵なし」と表示されてしまっている(2024年1月25日)。そのうち改善してほしい。

カーリル」は普通の人々にはまだ知られていないだろうが、大規模システムを開発できない中小図書館――特に学校や企業の――の所蔵データを参照できるシステムを開発しているので、単に貸出しのためだけに使うのはもったいない。特に最近できた「カーリルローカル」ではレア資料を拾うことができるので【図12-6】。

【図12-6】カーリルローカルに出る『ピンバイス40年史』の所蔵先

旧NDLサーチは都道府県立の総合目録、CiNiiブックスは大学図書館の総合目録が元なので、市町村立図書館、学校図書館、専門図書館(企業資料室)の総合目録はカーリルが乗り出してくるまでほぼなかったと言って良い。

 

■b. 国会図書館の蔵書目録として(使う)

永田町(東京)なり精華町(京都)なりにある国会図書館へ行き本を読むため、NDLサーチを使うのが蔵書目録としての使い方である。旧NDLオンラインの主な機能はこれであった。特にNDLの場合、ほとんど全部の本が書庫出納による閲覧なのが他の図書館と一番違うところだ。でも実はこの使い方がいちばん簡単。既知のタイトルや著者名で直感的に検索すればよい。ただし、最初の画面にもあるチェックボックス「全国の図書館」は外しておくのがよいだろう。

例えば戦前の出版社について知りたいと、1980年代に国会図書館で閲覧した記憶をもとに『出版便覧 昭和8年版』(出版新聞社、1933)がないか検索してみる。

すると、【図12-7】のような結果が出る。

【図12-7】NDLサーチを「出版便覧」で検索した結果一覧

上から2つ目が求めるものなので詳細画面に進んでみるが、普通の本なら表示される国会図書館の所蔵状況が表示されない。というか、「国立国会図書館:利用できる資料がありません」と表示される。

実はこれ、国会図書館における紛失図書なのだ。かつて目録を取る際にはあったが、現在、書架上の「定位置」に見当たらない場合、書誌データはあるのに見られないということがある。何ヶ月か探すのだがどうしても見つからない場合「紛失中」と認定されて見られない。NDLは全面「閉架」の図書館で、1990年代まで研究者を書庫に入れたこともあったが、それ以降はないので、十中八九、本が紛失しているということはないが、まれにこういうことがある。

しかし、3、4番目に表示される『出版社調査事典 昭和戦前期』(金沢文圃閣、2017)が『出版便覧 昭和8年版』の復刻なので、そちらを読むという手がありそうだと一覧表示から推測できる。検索語が自動で黄色で強調される機能が役立っている。

 

■c. 全国書誌データを主題(分類、件名)で検索する

○「見たことも聞いたこともない本を探す」ために検索する

さて、本を本当に調べる際には、「見たことも聞いたこともない本」(未知文献)を探すということをしないといけない。未知文献を探すには「分類」か「件名」で本を検索すればよいことになっていると拙著『調べる技術』第5章に書いた。

NDLの蔵書目録は一見、国会附属図書館の本を検索するものに見えるが、実はその機能は一部で、国立図書館の「全国書誌(national bibliography)」を検索するものでもある。日本の場合、ふつうの国にはない「国立中央」かつ「国会附属」の図書館が1個あるきりなので、両者は常に混同され、話がややこしくなっている。〈NDLで本が紛失しても書誌データを削除してはならない〉のは、全国書誌としての機能上、必要だからである。本の実物がなくなっても日本でその本が出たという事実は登録しておかないといけない。それが全国書誌なのだ。

NDLサーチで「見たことも聞いたこともない本」を探すことは、専門的にいうと「全国書誌」を主題で検索するということである。主題で検索とは要するに「分類」や「件名」で検索することだ。

旧NDLオンライン(旧NDLサーチでも)、最初の検索画面に「分類」や「件名」の検索窓(検索欄)があったのだが、新NDLサーチでは両方の欄が初期画面から消えてしまっている【図12-8】。そこでどうするか。

【図12-8】新NDLサーチの初期画面はスッキリ

まずは検索窓の右下「絞り込み条件」をクリックすると、画面が切り替わる。これが詳細検索である。検索窓が6つ出てくるが、肝心の「分類」や「件名」がないので、ここから先が我々がやらねばならない作業となる。

今度は左下「+項目追加」をクリックする。すると「検索画面に出す項目」というダイアログボックスが出る。しかしここでも見当たらないので、ボックス画面を下へスライドさせるとようやく「件名、ジャンル」「分類」という枠が表示される【図12-9】。

【図12-9】「検索画面に出す項目」で「件名」「NDC」「NDLC」をチェックし、決定

とりあえずここでは「件名」と「NDC」「NDLC」を選んでおけば、ふつうの日本語の本を検索するのに不自由はないだろう。NDCは日本限定だがどの図書館でも使っている日本十進分類法、NDLCは国会図書館ぐらいしか使っていない国立国会図書館分類法である。普及度は極端に違うが、実はどちらも知識の全分野をカバーする「一般分類表」なので、この世のすべての事象が分類できる(ことになっている)。逆に言えば、NDCかNDLCを使えば、本になっていることなら何でもわかるし、さらに重要なのは、ある事柄は本になっていないということまでわかっちゃう。

これらのチェックボックスをチェックして「決定」をクリックすると元の検索画面に戻るが、そこに「件名」と「NDC」「NDLC」の検索窓が生まれているのがわかる【図12-10】。

【図12-10】指定した検索窓が表示された

ログインするとこれら追加した検索窓は再ログイン時にも復活するようになっている。IDを取っておき、自分専用の検索窓セットを作っておいてお使いなさい、ということなのだろう。

 

◯書店についての本を件名で検索してみる(事例)

とりあえず件名欄で「書店」を検索してみると、【図12-11】のように出る。特定の新刊書店と、古書店と、「書店」が含まれる出版社についての本が出てくる。ノイズが多い結果ではある。

【図12-11】件名欄で「書店」を検索してみるとノイズが多い

拙著第5章で説明したように、戦後のまじめな本には件名が一通り付与されているし、NDLの名称典拠DBで件名もコントロールされているから、名称典拠で「本屋」や「書店」を検索して「書籍商」という件名を見つけられれば、件名「書籍商」でNDLサーチも検索できるはずである。しかし、やはり拙著で解説したように、名称典拠DBで、うまく自然語「書店」→件名「書籍商」が見つからないので、それはタイトル中に「書店」がある本のデータから件名「書籍商」を見つけ出せばよい、と指南しておいた。

【図12-12a】タイトル「本屋」で検索した結果一覧

【図12-12b】『東京の美しい本屋さん』の詳細画面

田村美葉『東京の美しい本屋さん 最新改訂版』(エクスナレッジ、2023)の詳細画面を開けて、かなり下へスライドさせていくと、この本の「件名標目」(件名と同じ意味)が「書籍商–東京都」だと判る。さらに「( 00961930 )」と「典拠→」という部分がリンクで踏めるようになっており、それぞれ典拠番号で引いた結果や、典拠データも出てくるが、拙著「細目の不備をどう補うか」で指摘したように、歴史的経緯から件名は細目の展開が不十分なので、典拠が十全に機能しない。拙著で説明したように、件名欄に改めて「書籍商」をコピペor入力して、フリーキーワード欄に「東京」や「神保町」などと、地名や時代を補足して入れ、再検索するとよいだろう。

【図12-13】件名「書籍商」と「神保町」の検索結果一覧

◯分類から日本の書店について単行書一覧を作ってみる

前記、『東京の美しい本屋さん』の詳細画面【図12-12b】を見ると、「NDC10版」の欄に「024.136 : 図書の販売」と表示され、リンクになっている。このリンクを踏むと、自動的に、東京都における図書の販売についての本がリストアップされることになる。

【図12-14】

連載で一度説明したが、実はNDC、8版、9版、10版はほぼ同じものとして使える。7版が独自な部分が多く、6版以前は大枠同じと考えてよい。またNDCでは、戦前の帝国図書館本に簡略化6版を、1980年以前には6版を、以後は8版をデータ付与したので、1980年の切り替えだけ気をつければNDC検索が有効に使えるはずだ。

またNDCは分類項目をわりと無理やり「十進」的に展開する。これは逆に言えば、桁数を減らしていけば必ず上位の大きな主題になるし、桁数を減らすと同時に当該数字以外の9つも一緒に表示させるようにすれば、類似のものも一緒に表示されることになる。

「024.136 : 図書の販売」はNDCの構造からいうと、「024」と「136」に分けられる。「024」が本の本当の主題(「主標目」という)図書の販売で、「-136」はおまけで付与される「細目」の地理区分で東京都の意味だ。たとえば地理区分を1桁左へ減らすと「-13」は関東地方ということになる。

今回は簡単に、「024.1」まで左へ桁を減らしてみよう。すると、日本の本屋についての本がリストアップされる。

【図12-15】NDC「024.1」の検索結果一覧

これだと東京の本屋の本が出てこないので、「024.1*」と、半角アステリスク「*」を一番右に入れて検索する。検索で「前方一致」と言われるやり方だ。これで、日本全国レベルの話と各県レベルの話、両方の本屋の本がリストアップされることになる【図12-16】。

【図12-16】NDC「023.1*」の検索結果一覧

ただ、1980年を越えて古くなると、途端に「全国の図書館」のデータばかりになるので、「これは?!」とちょっと気づかないといけない。NDC6版をネットで閲覧できるものがなぜだかないので、5版から引用すると次のようになる【図12-17】。

【図12-17】NDC5版の024の項目は8版以降と意味が違う

どうやら「024」はNDC6版だと図書の販売ではない。「024」は本の受容の話で、本の販売は制作と一緒に「023」だったようだ。さらにいくつかの本のデータを見ると、「023.9」が6版で図書の販売に割当てられた項目であったとわかる。そこで、NDC「023.9」で1980年以前の本を検索してリストを作ると、1980年以降の「024*」と同じ主題の本をリストアップできるということになる。

【図12-18】NDLにある1980年以前の本屋の本(NDC6版「023.9」)

◯NDL以外の「全国の図書館」に未知文献を求める

しかし、1980年以前の本をあえて「全国の図書館」にチェックして、さらに「024*」で検索してみると【図12-19】のようになる。するとNDL以外の全国の図書館でNDC8版で整理した本、つまり確かに本屋の本であるものが出てくる。というのも、大きすぎない図書館の場合に、NDCをバージョン違いに変える際に、遡及的に分類番号の付け替えをすることがあるからである。

cの、全国書誌を主題検索するという目的において、全国の図書館の本はノイズになる可能性もあるし、NDLでNDCを付与しない洋書が出たり、データの質もバラバラだが、あえて検索してみるというのも全国書誌としてNDLサーチを補完的に検索するという意味でいいと思う。

【図12-19】NDL以外で1980年以前の本を「024*」で検索する

■まとめ

NDL蔵書目録と都道府県立の総合目録を合体させたのが新NDLサーチ。総合目録にはさらに大学図書館などのおまけがついているので、全国の大きな図書館からレア資料を見つけたければ、そのまま初期画面で使えばよいだろう。

NDLの蔵書目録として使うのなら先頭に出てくるチェックボックス「全国の図書館」をはずして使えばよい。

未知文献を求めて分類や件名で検索する場合にはちょっとやっかい。IDをとりログインして自分用にカスタマイズする必要がある。ここでは分類や件名の検索窓を足したが、「本文の言語コード」あたりを足すのもよいだろう。

旧NDLオンラインで常に一緒に検索されていた「雑誌記事等」が新NDLサーチ「資料種別」でチェックが外れた状態が外れた状態がデフォルトになっている。これを不便と取る向きもあるが、私は賛成だ。もともと元祖雑索の雑誌カバー率は低く、来館者にマジに記事検索してもらうにはウェブ大宅、ざっさくプラス、J-stageなどを案内するのが筋だろう。


小林昌樹(図書館情報学研究者)

1967年東京生まれ。1992年慶應義塾大学文学部卒業。同年国立国会図書館入館。2005年からレファレンス業務に従事。2021年退官し慶應義塾大学でレファレンスサービス論を講じる傍ら、近代出版研究所を設立して同所長。2022年同研究所から年刊研究誌『近代出版研究』を創刊。同年に刊行した『調べる技術』が好評。専門は図書館史、近代出版史、読書史。詳しくはリサーチマップを参照のこと。

 

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