皓星社(こうせいしゃ)図書出版とデータベース

第三回 見たことも、聞いたこともない本を見つけるワザ――件名の本当の使い方

小林昌樹(図書館情報学研究者)

■「未知文献」を見つける方法がある

見たことも、聞いたこともない本を見つけるなんてことはできるだろうか? そんなことはできないからこそ、本好きは毎日、本屋へ寄ったり、図書館の中をぶらついたりするのではなかったか。学者だって見たことも聞いたこともない本を見つけることはできない。

しかし、あるのだ、そんなワザが――そんなバカなと思うだろうけれど、本当である。というか、アメリカの司書は誰でもこれができる。できるからこそ、司書はアメリカで、学者に準ずる専門家として認知されたのだ。

 

○本の中身をコトバに

見たことも、聞いたこともない本とはどんな本だろう。それは、見たことも、聞いたこともないけれど、自分が欲しい、読みたい本のことだろう(図書館学では「未知文献」と呼んだもの)。では自分が読みたいとは何か?

こういった感じの本、こういったことがらについての本ということになる。

アメリカの各図書館では受入れる本に片っ端から、その本の内容を、特殊なキーワードとして目録屋(cataloger)の司書が所蔵データに記載している。

実はこの特殊なキーワードは、レファ司書やユーザが使う部分なのである。というのも、この特殊なキーワードのカラクリに通じさえしていれば、「見たことも聞いたこともないけれど、ある特定の内容の本」の「有無」を確認することができるからなのだ。

「有無」というのはまさに、無いことも分かっちゃう。世界中の図書館データ(まさに「世界書誌」)にあたれば、無いこともわかる悪魔の証明システムなのだ(無いことの証明は「悪魔の証明」と呼ばれ、不可能ごとに類する)。

 

○「件名」はコントロールされた特殊なキーワード

アメリカ図書館界で本の中身を表すキーワードを、subject headingという。主題(サブジェクト)を表す見出し(ヘディング:カード上部のヘリに書き出したしるし)。日本では「件名標目」と訳している。

実は本のタイトルにも中身を表すコトバはあるんだが、同じ事柄でも違う言い方があったり、ある時代や国のことしか書いてないのに国名などがタイトル(サブタイトルにも)に書いてなかったりする。それを一つの決まったパターンに寄せておけば、名寄せならぬ、ことがら寄せができるというわけ。みんなが使う自然な表現のコトバを「自然語」、それらを集めて同じ概念なら1つに寄せた表現のコトバを「統制語」と図書館情報学では呼んでいる。件名は統制語の一種である。

たとえば『本の歴史』『書物の歩み』『書籍の4000年』といったような本は、件名で表現すると、みんな「図書 — 歴史」。主題が同じだと件名も全く同じになる(ようにしてある)。

ここですぐ気づくと思うけれども、逆に、「図書–歴史」という件名が付いている本ならば、どんなタイトルが付いていようとも、主題が同じ本、ということになる。ここ重要。

 

■見たことも、聞いたこともない本を見つけるワザ

で、さらに一歩進めると。

見たことも聞いたこともないが、こういう主題の本、というのを勝手に考えることはできないか? →できる。では、それをきちんと表す件名標目を作ってOPACにお伺いをたてれば、どうなるか。

そう、見たことも聞いたこともないが、読みたい本を見つけることができるのだ。

アメリカでお客の参照作業を手伝うレファレンス司書は、お客に読みたい本を聞いて、その望みを件名という特殊なキーワードに変換し、目録にお伺いをたてることで喰っていたといってよい。

 

○例えば徳川家康の小説

例えばあなたがアメリカ人で、徳川家康が主人公の小説を読みたいな、と思ったとする。

そう相談すると司書は、とりあえずWorldCatでsu:tokugawa ieyasu fictionと入れて検索してみたら、と言ってくる。英語だと7件ある。

 

・図1 徳川家康の小説(英語)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○例えば東ローマ帝国を舞台にした小説

東ローマを舞台にした小説はないかしら? と思ったとする。WorldCatでsu:byzantine empire fictionと入れて検索してみる。英語だと223件ある。

 

・図2 東ローマを舞台にした小説(英語)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■日本では?

こんな便利なカラクリがあれば誰でも使いたいと思う。日本人だって使いたいと思った、100年ほど前。けれど、ちょっとした誤解*で広がらず、日本でマジメに件名を付与している図書館は、あまりない。一応まじめに付与している図書館は国会図書館だけといってよい。

幸い、2000年代からOPACのネット公開が進み、国会図書館の書誌データを現在では家から検索できる。NDL ONLINE(以下、NDLオンライン)という名前のシステムである。

だから、NDLオンラインを件名で引けば、「見たことも、聞いたこともない本を見つける」ことができるはずなのだ。

 

○でも、実際にはなんかヘンテコ

大喜びでNDLオンラインを「件名:徳川家康 小説」で引いてみると、なんかヘンテコなものが3件でてくるだけで、よくわからない。WorldCatで出る山岡荘八『徳川家康』すら出てこない。

ネット情報源というのは紙ツールとことなり「凡例」が無いか、はなはだ弱い。だから常に、検索結果から逆算して考えないといけない。ここでは結果から何かオカシイと考え始めないといけない。ヘルプにある「件名」の説明は……。コメント不能。

幸いにして私は答えを知っているのでここに説明しておく。

 

○件名が付与されていない図書のデータがある。

国会図書館では雑誌、新聞などを除く図書のデータには件名が付与されているのだが、次の書誌データ群には付けられていないと、はっきり説明してくれるものは見たことがない(洋書の件名も説明するとややこしくなるので、ここでは和書――日本語図書――だけを説明)。

(a) 遡及入力で作られた図書:戦前の帝国図書館本

(b) 文学作品の図書

(c) 娯楽書など:児童書、学習参考書、マンガ、エロ本

逆にいうと、これら3グループから外れる、戦後のまじめな本にはおおむね、件名が付与され検索可能であると考えてよい。資料の整理区分と時代で表1のようになろう。

・表1 NDL和図書データの件名有無

 

 

 

 

 

 

 

※甲部、乙部は帝国図書館時代の整理区分。A整理はまじめな本の旧・内部呼称、Y分類は請求記号がYで始まる簡略整理。甲部に付与していた件名は2013年9月、カードを廃棄して永久に失われた。残念至極。NDLSHの表が出来たのは1954年だが、それ以前から件名は付与していた。

 

■求める事柄の件名を見つけるには2つ方法がある

とりあえず、〈戦後のまじめな本には件名がついている〉とわかった(ことにする)。

戦前の本や戦後の娯楽書なども、本当は件名で検索したいところだけれど、付与されていないので不可能だ。これらについては分類から検索する手があるのだが、それは別項としたい。

 

○求める件名をどうやって見つけるか

さあ、求めるものがまじめな本なら、件名を使って探して!

と言いたいところだが、それをするにはまだ課題が2つある。一つは〈適切な件名をどうやって見つけるか〉ということ。もうひとつは〈現状ではしょられてる件名の細目をどう補うか〉。

最初の適切な件名をどう見つけるか、ってのは、例えば「書籍」でなく「本」でなく「書物」でもなく「図書」が、件名の「標目形」として指定されているのを知るのにはどうすればよいか?ということである。

前回紹介したNDL典拠が、公式的な答えとなる。つまり、この典拠DBで、人名などの固有名詞だけでなく、普通名詞(普通名詞の件名を「普通件名」という)もコントロールするようになったので、これを検索して適切な件名を求めるのだ。

 

・図3 普通件名「図書」をNDL典拠で見つける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図3に示したように、NDL典拠DBのラジオボタン「普通件名のみ」を選択して、求めたい事柄の、自分が思いつく言葉を検索し、「どうやら〈図書〉が、本や書物の件名らしい」と気づければOK。

しかし、この典拠DB、からくりには不備はなくとも、データ、とくに「←本;書籍;書物;Books」といった「参照形」の数が少なくて、こっちが思いついた言葉を全部拾って件名につなげてくれない。

例えば図4のように「本屋」から件名「書籍商」が見つからない(貸本屋などは見つかるが)。

 

・図4

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○タイトル中の自然語から件名を見つける方法

実は本の主題を表す言葉は、タイトルやサブタイトルに7割ぐらい確率で出るそうだ。つまり、タイトル中に主題を表す多様なキーワードがある。それがつけ目なのだ。それを逆手に使えば典拠の、参照形の不備を補えることは、これは図書館学の教科書に書かれづらい重要ノウハウなのである。

つまり典拠など引かず、いきなりOPAC(ここではNDLオンライン)を引くのである。例えば「本屋」の本はないか、と思ったら、タイトルに「本屋」を含む図書はないか、と検索してしまえばよいのである(図5)。

 

・図5 タイトルに「本屋」を含む図書はないか、とNDLオンラインを検索(並びはデフォルト「適合度順」のまま)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上記の図5でいうと1件目は小説(で件名がない)、2件目は出版業――本の制作――の話(で件名「出版」)で、3件目『本屋図鑑』の詳細表示(タイトルをクリックしてさらに「詳細な書誌情報を表示」をクリック)を見ると件名「書籍商–日本」をゲットできる。これが国会図書館が独自に規格化して付与している件名「NDLSH(エヌディーエル・エスエイチ)」というものである。「–日本」の部分は「細目」(subdivision)で、「書籍商」が本屋、書店を表す件名標目(主件名)と呼ばれるものだ。

無事に(?)件名「書籍商」――なんて堅いコトバだろう――がゲットできたので、再度NDLオンラインで図書を件名で検索してみる。並び順がデフォルトだと「適合度順」になっているのだが、正しい件名(分類も同じだが)で検索する場合、検索結果は全て適合している(はず)なので、この部分は「新しい順」か「古い順」にすると良い。結果一覧を見ると、それだけで同一主題の論じられ方の変遷などが直感的にわかり、勉強になる。

 

・図6 件名「書籍商」で新しい順のリスト

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

件名「書籍商」は(実は)洋書や、戦後に国会がゲットした戦前図書にも付与されているので――件名は戦後のマジメな本だけ、というのは「おおむね」なのです――図5の検索結果859件は、戦後図書全部より多いことになる。出版年を「1945〜」とし、左下の選択ボックスで「本文の言語>日本語」を選ぶと、656件となり、戦後、本屋についての単行本はおよそ650点出たことになる。

 

■細目の不備をどう補うか

適切な件名をゲットさえすれば、およそどんな本でも見つけられるわけだが、さらにNDLSHの場合、海外の件名にない運用上の欠点があり、それを補って検索するとさらに便利に使える。

具体的にいうと「細目」の不備である。

例えば鈴木俊幸『絵草紙屋江戸の浮世絵ショップ (平凡社選書 ; 230)』(平凡社, 2010)に次の件名が付いている。

件名:書籍商–日本–歴史–江戸時代

この件名のうち、「書籍商」はメインの件名なので「主件名」という。それに対して「日本」「歴史」「江戸時代」は全て「細目」と呼ばれると上述した。この細目をきちんと付けきるのが、件名を活用するのに必須だったのだが、いろんな理由で**きちんと付けられない傾向に陥ってはや70有余年。

本当なら、

江戸期の本屋について知りたい!

→それぞれ、典拠DBを見て件名を探してみて! それで、件名:江戸時代+書籍商で件名検索するといいよ!

と説明したいところだが、それだと結果が出ない(正確には検索漏れが多くなる)。

 

○細目にあたるコトバをキーワード欄に足して引き直す

ではどうするか? ここでも同じ手法を使える。つまり、タイトル中その他にある自然なキーワードを細目の代わりに検索でひっかけてくるのである。

例えば、江戸期本屋の本を見つけたければ、件名:書籍商+キーワード:江戸で図書だけを検索すると34件の和書が表示される(図7)。

 

・図7 件名「書籍商」+キーワード「江戸」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦後の本屋本約650件のうち、江戸時代を中心に扱う本は30数件あるようだとわかる。

 

○典拠から細目付きの一覧を見てみると……。

ちなみに「書籍商」という件名をゲットした後であれば、典拠DBに戻ってこれで引き直すと、細目付きのものでどのようなものがあるのかを一覧できる(図8)。

 

・図8 書籍商には他にも細目付きの本がある

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この典拠一覧を見ると、ロンドンの本屋、トスカナの本屋史なんかも本になっていることがわかる。前述したように、全ての図書にきちんと細目が展開された件名が付与されているわけではないが、本屋の本にどんな主題のものがあるかが、この一覧からわかる。

 

■まとめ

・適切な件名をゲットできれば、少なくとも戦後の本で自分の知りたいことが主題になっている本があるかどうか、わかる。

・適切な件名は典拠DBを引けばわかると言われるが、実際にはOPACで引っ掛けたデータから適切な件名の候補を探したほうがよい。

・件名をゲットできたら、それで作った検索集合に国や場所、時代などをキーワードをかけ合わせ検索をすると、より自分のニーズに沿った絞り込みができる。

 

■玄人向けのメモ

・NDLオンラインは完全一致(例:「/図書/」で「図書館」を排除)や部分一致(半角「*」を使う)もできる。

・社史や伝記に付与される固有名件名(人名や団体名)については長くなるのでここでは扱わなかった。機会があれば別項で。

・NDLオンライン詳細検索の件名欄は、分類欄が標目の種類別に検索できるのに対して、一切合切ごっちゃにしか検索できない。博士論文に著者が付けたフリーキーワード、児童書に商用MARCで付けられたらしいBSH(?)、洋書のLCSHなどが引けるようである。この記事ではデータの主流たるNDLSHを前提に説明した。

・小説(フィクション)にも件名を付与すべきと思うが、現状ではしていない。WorldCatのLCSHが少し使えるぐらいしかないが、和書がヒットするのが裏ワザといえば裏ワザ。

・件名の不備は、レファレンス・サービスが日本で発展しない足かせとなってきた。件名標目の非発展史を書いたら良いだろうと思っている。

 

■注

* 件名を、分類(の名辞)と取り違えた。例えば、シェパードの本が来たら「シェパード」という件名を付与しないといけないところを、「犬」とつけるような傾向が明治期からあった。これは英米でalphabetico-classed catalogという分類目録の一種を編成する際の標目付与法に類似したもので、件名ではない。件名付与の際の鉄則「特定記入の原則」(特殊記入ともいう)にそもそも反する付与法である。それを是認する理論が日本固有で作られてしまったのは、これはもうなんと言ったらよいか……。山下栄「特殊記入の原則と限界:中小図書館における件名標目の特殊化方式について」『図書館資料論集』(仙田正雄教授古稀記念会, 1970. p.211-236)がそれ。

** カード目録は人力で編成するので、細目つきが嫌われたことにあるらしい(前掲山下p.221もカード繰り込みの煩雑さを件名運用省力化の主因とする)。またカード目録の場合、細目を独立して検索できないので、そこで手を抜いても検索結果に(あまり)差が出なかったこともある。しかし、OPAC導入でむしろ活用できる部分になった。細目を100%展開する際に役立つ理論「標準列挙順序」(standard citation order)が図書館界で知られていないこともある。

 

■次回以降の予告

レファレンス業務という実地での蓄積から披露される、小林昌樹さんの『在野研究者のレファレンス・チップス』ですが、小林さんの身近で分かりやすい語り口も相まって、前回に引き続きネット上でもかなりの注目をいただいているようでございます。

膨大な資料の中から自分のお目当ての文献を見つけ出す――一見途方に暮れてしまうような無謀な宝探しにも見えますが、リンク集やデータベースなど調査への近道はあちらこちらにあるのだ、と小林さんは言います。さあその地図を持って文献参照の旅へ!……とはいえ、いざ調べ物を始めてみると「新聞のない時代にはどうやって新聞記事情報のようなものを探せば良いのか?」「索引の排列にはどのような種類があるのか?」などなど、どんどん疑問が湧き出てくるのではないでしょうか?

せっかくならばお読みくださっている皆様の疑問を解決したい!ということで、幾つか事前にピックアップしたレファレンステーマより、皓星社公式Twitterアカウント(@koseisha_edit)にて近々アンケートをとる予定です。次回第四回のテーマはその中で最も票が多かった事柄について小林さんにご寄稿いただきますので、皆様是非ご回答下さい。(皓星社編集部)

 

 


小林昌樹(図書館情報学研究者)

1967年東京生まれ。1992年国立国会図書館入館。2005年からレファレンス業務。2021年に退官し慶應義塾大学文学部講師。専門はレファレンス論のほか、図書館史、出版史、読書史。共著に『公共図書館の冒険』(みすず書房)ほかがある。詳しくはリサーチマップ(https://researchmap.jp/shomotsu/)を参照のこと。

 

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