2001.7.21 No28
■■■■■■■■■■■ 皓星社通信 ■■■■■■■■■■■■
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◆◆ 皓┃星┃社┃通┃信┃          ◇2001年7月21日号  No28◇
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隔週刊行(の予定は未定ですが……)
                                    発行所 株式会社 皓星社
                  編集長    川尻 絵馬
                166-0004東京都杉並区阿佐谷南1-14-5
              TEL03-5306-2088    FAX03-5306-4125
                   info@libro-koseisha.co.jp
【等幅フォント推奨】     http://www.libro-koseisha.co.jp

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☆☆ 目 次 ☆☆
1.【阿佐ヶ谷歳時記】−番外− 太地紀行        松本 純

2.皓星社から
  ● ブックレット、蒐書日誌、朝鮮科学技術史研究……
   必見! 今回は新刊をジャンジャン紹介しています!

◎編集後記
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☆ お久しぶりの刊行となってしまいました皓星社通信。みなさま
暑さに負けずにお過ごしでしょうか。「腹十分目」が昼食どきの合
い言葉、わたくし川尻も猛暑の中の営業ですっかり食欲をなくして
しまいました。もっとも、一日内勤すれば元に戻るのですが。

☆ 前号の27号ですが、Macをお使いの方に文字化けが出てしま
ったもようです。全文文字化けというひどいものでした。文字化け
された方には大変ご迷惑をおかけしました。今後はこのようなこと
がないよう注意いたします。

☆ 今号も「だいこん屋」ご主人松本さんにご登場いただきました。
俳句を交えての紀伊半島紀行です。登場する熊野地方は、わたくし
川尻がもっとも行ってみたい場所のひとつ。旅行する夢をみたこと
があるくらいです。東京からだと交通の便がよくないと評判の熊野。
夢に出てきたのも電車の乗り継ぎシーンでした。
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【阿佐ヶ谷歳時記】−番外− 太地紀行         松本 純

 5月2日から7日まで、店内改装をかねての連休とし、その間に
伊勢→鳥羽→熊野→太地→白浜と紀伊半島廻りの旅にあてましたの
で、今回は阿佐ヶ谷を離れて、その旅日記を略記します。俳句仲間
T氏夫妻と私達夫婦の4人連れです。

 5月3日 9時東京発の「のぞみ5号」にて名古屋へ。11時伊勢
本線「みえ5号」で桑名、阿漕を経て伊勢へ。 

 東国に亀啼きて名の蛤は(桑名) 
 徂く春や阿漕が魚も目は泪(阿漕) 

 12時半伊勢着。駅の近くの店に入り、名物の伊勢うどんを注文
したものの、味噌溜りのような味の黒い汁と、ヘラ鮒の餌のような
腰のないうどんに仰天します。二日酔いと寝不足による体調不良の
ため、ほとんど箸もつけずに店を出て、折から燕が飛び交っている
町をふらつきます。

 巣つばめや面妖なりし伊勢うどん(伊勢)

 駅前で白浜までの3日間予約してあったレンタカーに乗り、T氏
の運転で伊勢の外宮、内宮へ。ともに拝殿、本殿は立入禁止のうえ、
撮影も不可で、やむなく柵の隙間から拝するのみです。

 拝みし伊勢は八十八夜寒
 楠の大瘤めでて暮の春
 神籬を出でて代田へ五十鈴川

 内宮前の「おかげ横丁」をぶらついた後、1時間足らずで鳥羽着。

 5月4日 二見が浦へ。関東でいえば、江ノ島といった風情なの
ですが、ありきたりの土産物屋ばかり多く、肝腎の夫婦岩も名声の
割には貧弱な感じを免れ得ません。一旦伊勢に戻り、高速道路を経
由して、大台ヶ原下の山道を、単線ジーゼルカーの紀勢本線とあざ
なうようにして、昼近くに尾鷲着。

 藤懸かるこんな難所を紀勢線

 滝付近を一周して再び急な山道を巡り、青潭をたたえた熊野川上
流の七色ダムへ。こんな秘境にも、すでにブラックバスが放たれて
釣りの対象になっています。発電所の上の堰を反対側に渡り、流れ
に沿って、北山キャンプ場、瀞八丁を過ぎると次第に河原が展らけ、
船底の浅いジェット遊覧船が航行しています。

 展けきて燕容れたり熊野川

 十津川との合流点からこれを遡り、3時頃熊野本宮着。社前の茶
屋にて小憩。

 花椎や目張りの鮨に瞠きて
 
 合流点へ戻り、再び熊野川沿いに下り、熊野三山の一つ新宮速玉
神社参拝。全社殿が鮮やかな丹塗りで、天然記念物のオガタマの大
樹の花が満開でした。紀伊勝浦を経て、宿泊地の太地町営「白鯨館」
に6時着。すぐ近くに住んでいるかつて捕鯨船の同僚だった小割端
さん(もと操機長、72歳)に電話したところ、間もなく畑見尚洋
さん(もと操舵手、60歳)を伴って来館。小割さんとは28年ぶ
り、畑見さんとは31年ぶりです。まずはビールで乾杯、この辺り
で獲れた鮪、鰹、烏賊などを肴に酒もはずみ、忽ちのうちに昔の飲
み仲間に戻ってしまいます。

 明治の初め頃まで、日本屈指の沿岸捕鯨の地だったこの村は、同
11年12月24日に、それまで獲ることを禁忌としていた親子連れ
の背美鯨に手を出し、折から時化はじめた夜の海に、111名の命
と全船を失い、太地の捕鯨は一度壊滅してしまったのです。その時
の様子は、C.W.二コル著の『勇魚』の下巻に詳しく誌されています。

 下って明治の末に導入された、ノルウェー式近代捕鯨の隆盛によ
り、再び多くの捕鯨船員や、捕鯨母船の作業員を、南氷洋や北洋へ
送り出していたのですが、近年の厳しい捕鯨規制により、又もや壊
滅状態になり、今日では、夏場に小型捕鯨船が、5〜6米程のゴンド
ウ鯨を数等獲りに来る程度になってしまいました。

 町全体も、漁業から観光事業へと転換を計り、今では紀伊半島有
数のレジャーランドに変身し、多数のもと捕鯨関係者や園家族がこ
こで働いています。ちなみにここの館長さんも、もと捕鯨船員だっ
たとのことです。

 5月5日 午前中に那智の滝、那智大社、西国一番札所の青岸渡
寺をめぐります。二日酔に石段の昇り降りがきびしくて息を切らし
ます。
 
 普陀落の方に靡けり那智の滝
 竹秋の一の札所に和讃開く

 午後は串本港を経て、大島、潮岬へ。串本の手前の海岸に立つ橘
杭岩は、高さ10米ほどの飛込み台のような大岩が10本ばかり並
んでいるのですが、これを二見浦のような太綱でつなぎ合わせたな
らば、さぞ壮観な眺めになることでしょう。

 夕方、もと通信士の海野恂一さん(69歳)を訪問。お気の毒にも
10年前から右半身が付随となり、酒も飲めなくなったとの事。ペ
ルーで操業した時以来なので、31年ぶりの再会なのですが、無線
室でたびたびウイスキーを御馳走になったことが偲ばれます。今は
奥さんと娘さんが、観光土産の鯨細工の卸元をやっています。帰館
後昨夜の二氏に、元甲板長の藪光彦さん(72歳)が加わって再び
酒宴。30年前、私が阿佐谷に酒場を開いて2年たった時に、先の
小割さんと一緒に来店して以来です。若い頃から太地の町では評判
の大酒飲みだったのですが、今は畑仕事と病気の奥さんの看護に専
念し、町中の人から尊敬されているとのことで、時も変われば人も
変わるものだと感慨もひとしおです。手作りの立派な蚕豆とグリー
ンピースを頂戴しました。

 甘藷挿して昔捕鯨の手練れなる

 5月6日 半島の南端を観光しつつ白浜へ。南方熊楠記念館を見
学。7歳から15歳の間にした「和漢三才図会」「本草綱目」「大
和本草」「諸国名所図会」等の完璧な筆写を見て、その早熟ぶり、
天才ぶりに驚嘆します。旧制和歌山中学を卒業後に上京、神田共立
学校高橋是清に英語を習い、明治18年に帝大予備門に入学、夏目
漱石、正岡子規、山田美妙等と同期なのでした。

 熊楠の才に立夏の舌を巻く

 7時30分白浜発、19時羽田着、阿佐谷に帰りつき、またも深
酌。
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■■関連リンク集■■

【伊勢うどん】
絶対茹で過ぎやと思うほどに柔らかく太すぎる麺、黒いたれが、伊
勢うどん初心者を拒むように立ちはだかる。
http://www.arashima.com/udon/

【伊勢神宮】
http://www.infocreate.co.jp/hometown/ise/jingu/jg.html

【伊勢参り】
http://homepage1.nifty.com/fuufuyuuyuu/sub4/990115.htm

【熊野速玉神社】
http://www.kumanokaido.com/hayatama/

【那智の滝】
http://www.town.nachikatsuura.wakayama.jp/kanko/taki.html

http://village.infoweb.ne.jp/~fwix8221/Nati_Taki.htm

【南方熊楠】
南方熊楠(田辺市)
http://www.city.tanabe.wakayama.jp/kumagusu/index.html

南方熊楠資料研究会
http://www.aikis.or.jp/~kumagusu/

【捕鯨と鯨関係リンク再録】
◎鯨について
☆太地町立くじらの博物館
http://www.town.taiji.wakayama.jp/museum/mainmu.htm

☆日本鯨類研究所
http://www.icrwhale.org/

☆鯨と海の物語
   「くじら博士」奈須敬二 メモリアル・ホームページ
http://www.mnet.ne.jp/~whalenas/index.html

☆日本海の鯨たち=日本海セトロジー研究会
http://www.wingz.co.jp/ceto.html

◎捕鯨について これについては両論併記(鯨は喰いたし……)
☆日本捕鯨協会
http://www.jp-whaling-assn.com/jp/index.htm

☆我が国の捕鯨を取り巻く諸問題についての論説
    及び似非エコロジー運動の欺瞞と犯罪性についての考察。
http://www.infosnow.ne.jp/~whale/part1.htm

★自然環境フォーラム
    FORUM for Environmental issues : an online NGO
http://www.nifty.ne.jp/forum/fenv/indexinr.htm#トピックス

捕鯨>国際捕鯨委員会(IWC)年次総会2000
http://www.nifty.ne.jp/forum/fenv/topics/20000711a_whale.htm

捕鯨>久しぶりに捕鯨問題の基礎講座になりました
捕鯨反対派の「捕鯨反対」の根拠を改めて確認してみよう。
http://www.nifty.ne.jp/forum/fenv/topics/20000707a_whale.htm

★GREENPEACE
http://www.nets.ne.jp/GREENPEACE/index.html
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【皓星社から】

 今回は新刊をジャンジャン紹介しちゃいます。
 
● お待たせしました! 皓星社ブックレット12 刊行!
『証人調書(3)・「らい予防法国賠訴訟」犀川一夫証言』
ハンセン病国家賠償請求訴訟弁護団 編
               A5判 246頁 並製 定価800円+税

  2000年3月28日・3月3日に熊本地裁で行われた証言の全文です。
証人の犀川一夫氏は、現在沖縄県ハンセン病予防協会理事長。30年
間、沖縄県のハンセン病治療に従事してきた犀川氏の証言。
 くわしくはこちらから。
http://www.libro-koseisha.co.jp/top03/rb912.html

● 皓星社ブックレット13 『寺島萬里子写真集 病癒えても』
            A5判 並製 144頁 定価1,800円+税
             
 銀座ニコンサロンで行われた写真展も大好評だった寺島萬里子先
生の写真集。前号でも紹介いたしましたとおり、国立ハンセン病療
養所栗生楽泉園で撮影し続けた写真を精選して一冊の本にしたもの
です。入園者の方の聞き書きや年表などの解説つきで、ハンセン病
問題の入門書としても最適です。はやくから新聞や雑誌にも紹介さ
れ、問い合わせが相次いでいる話題の一冊。
 くわしくはこちらから。
http://www.libro-koseisha.co.jp/top03/rb913.html

● 『蒐書日誌』1、2
          四六判・上製 1巻 404頁 定価2,800円+税
                                 2巻 300頁 定価2,400円+税

 大屋幸世先生による新刊『蒐書日誌』1、2巻が刊行されました。
古書店めぐりの楽しみが日誌形式で綴られています。著者の大屋先
生は鶴見大学の教授。軽妙ながら、日本近代文学の専門知識で裏打
ちされた文章はさすが。読書論、作家論としても楽しめます。書名・
人名索引つきで、読書ガイドとしても最適な盛りだくさんの内容。
日本図書館協会選定図書。

 くわしくはこちらから。
http://www.libro-koseisha.co.jp/top03/rb1139_40.html

● 近日刊行! 『朝鮮科学技術史研究―李朝時代の諸問題―』
          A5判・上製・本文418頁 定価4,000円+税

 朝鮮大学校の任正■先生(編集部注… ■には偏=火、旁=赫が入
ります。イム・ジョンヒョク、Im,Jong-Hyok) による、本邦初の朝
鮮科学技術史の研究書。担当編集者による入魂のメッセージをお読
みください。

 これまで、日本の読書界において東アジアの知性史といえば、一
般的には儒教史や道家思想、仏教史といったものに代表されがちで
あり、またその中心は旧中国であったことは否めません。しかしな
がら、古代より朝鮮半島における知的活動が、日本列島に大きな影
響を及ぼしてきていることは隠れもなきことです。李朝朝鮮におけ
る大儒、李退渓(李滉、1501-1570)の思想が、林羅山,藤原惺窩,
山崎闇斎といった人々に大きな影響を与えた事実は、関心のある向
きには辛うじて知られている、だがかなり重要な知的交流の証拠で
す。また、旧中国の科学史・科学思想研究はJ.ニーダムの膨大な
業績や、山田慶児『朱子の自然学』岩波書店1978、等によって徐々
に周知のものとなってきていますが、その一方で李朝期の科学技術
史やその思想についてはほとんど知られるところがありません。

 しかし、世界史上初めて金属活字が製作され、訓民正音(ハング
ル)という非常に合理的な文字表記が意図的に考案されたのが朝鮮
であることを鑑みても、この地に科学的合理主義と親和的な知の活
動があることは容易に見て取れます。この度当書肆より刊行されま
す本書は、この間隙を埋める貴重な業績であり、本邦初の本格的研
究論集です。科学史や朝鮮史の研究者のみならず、東アジアの知性
史をこれまでのイメージに囚われず、広い視野から見直す必要性を
感ぜられている方々に広くお薦め致します。
 
 『朝鮮科学技術史』に関するお問い合わせは
info@libro-koseisha.co.jp
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【編集後記】
● 松本さんも「ほとんど箸もつけずに店を出」たという悪名高き
伊勢うどん(伊勢の方、すみません)。【関連リンク集】のリンク
チェックのため、各サイトを見ていたら伊勢うどんの通販が。食欲
そそる文章に迷わず申し込みました。周囲にウマイという人がまっ
たくいなかったため、その存在意義すら不思議に感じていた幻の伊
勢うどん。腰のないうどんの食感を何度想像したことか。満を持し
て、皓星社の腹十分目女がトライいたします。乞うご期待(?)。

☆ ご意見、ご感想、うまいもの情報をお寄せください。投稿もお
待ちしています。
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