2001.3.19 No16
■■■■■■■■■■■ 皓星社通信 ■■■■■■■■■■■■
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◆◆ 皓┃星┃社┃通┃信┃          ◇2001年3月19日号 No16◇
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隔週刊行(頻繁に増刊の予定ですが……)
                                    発行所 株式会社 皓星社
                  編集長    川尻 絵馬
                166-0004東京都杉並区阿佐谷南1-14-5
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【等幅フォント推奨】     http://www.libro-koseisha.co.jp
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【目 次】
 1.【映画評】三里塚闘争と記録映画作家・小川紳介
                               尾形明彦

 2.皓星社から
    
◎編集後記
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☆ 突然ですが、今回は担当川尻の独断と偏見と趣味で、映画評を
お届けします。書き手はフリーペーパー『du Japon』編集長の尾形
明彦さん。『du Japon』とは映画専門のフリーペーパーです。
 この『du Japon』、フリーペーパーとあなどるなかれ。前号のイ
ラン映画特集では、『パンと植木鉢』のモフセン・マフマルバフ監
督のインタビューを掲載した志の高い映画専門紙なのです。
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【映画評】三里塚闘争と記録映画作家・小川紳介 
                                   尾形明彦

 先日、京橋・国立フィルムセンターにて 「 フィルムは記録する
2001:日本の文化・記録映画作家たち」と題した特集が行われた。
歴史的資料としての重要性が指摘される文化・記録映画は、その資
料的価値にとどまらず、社会や風土、人々を様々な形でフィルムに
おさめると同時に、映画としても極めて刺激的な作品が数多く存在
する。

  今回の特集では、主に岩波映画製作所を中心として、羽仁進・羽
田澄子・時枝俊江・黒木和雄・松本俊夫・小川紳介、その他多数の
貴重な作品が上映された。

 その中でも特に注目してしまうのが小川紳介だった。小川紳介は
岩波映画から独立した後、今回上映される『青年の海―四人の通信
教育生たち』『現認報告書-羽田闘争の記録』『圧殺の森-高崎経済
大学闘争の記録』を撮り、その後、成田空港反対闘争に触れた一連
の三里塚シリーズに着手する。

 小川紳介、その作品はとりわけカメラの対象に対しての理解と関
係性が傑出する。

 1970年代、三里塚闘争は加熱した。革マル、革労協やその他の新
左翼系グループが三里塚を拠点として自らの運動を展開していった
のに対して、小川紳介は活動の方向性に徐々に変化をみせた。強制
測量阻止デモなどの運動の激しい側面から、どんな顔の人間がどの
様に生きているのか。その土地の人々と深く関わりながら、自らも
その土地に移り住み、生活に触れ、農業に触れ、それら全部をひっ
くるめた人々の生きる姿を対象として、制作から日本各地での上映
に至るまでの運動を展開していった。そしてこの人々の顔つきと生
活を見つめる態度こそ、三里塚のまさしく根本に関わる問題だろう。
 
 三里塚問題、すなわち成田空港建設問題はその計画の無謀さと同
時に、人間に対する態度の問題だった。もともと成田空港付近の土
地は天領払い下げであったという背景もあり、政府は当然の事のよ
うに建設を決め「出て行け」という姿勢で強引に計画を押し進めた。
この人間の生活や生きるということ自体を踏みつぶすような居丈高
な一方的な態度と行為に、人々は死にもの狂いの抵抗を行ったのだ。
戸村一作の回想の中で一人の村人がこう語っていたのを記憶してい
る。

「俺は国が、空港作りたいんだけどすまないけど土地を売ってくれ
ないか、とはじめに言ったんなら売ったかもしれない」
(「エコロジーの源流 谷中村から水俣・三里塚へ」
                 宇井純 編著 社会評論社)。
三里塚の人々の生活と風土を見つめ愛した小川紳介は、まさしく三
里塚の根本に触れたと言えよう。 

【関連リンク集】
成田地区の歴史 三里塚御料牧場記念館
http://www.city.narita.chiba.jp/sightsee/sight-avi-sanrizuka.html 
富里地区の歴史 富里開拓物語
http://bay.cep.chiba-u.ac.jp/HAKKEN/TOMISATO1/kaitaku.htm

HP版三里塚闘争日誌……これしかないしなあ
http://www.zenshin.org/syuu_san/syuu_san.htm

上映会の予定がわかる! 東京国立近代美術館フィルムセンター
http://www.momat.go.jp/fc.html
小川紳介監督作品一覧
http://www.jmdb.ne.jp/person/p0175170.htm
小川監督が創設に深く関わった山形国際ドキュメンタリー映画祭。
2年に1回開催されます。
http://www.city.yamagata.yamagata.jp/yidff/ff/info/ja/info.html#info2
2001年は10月に開催予定。
http://www.city.yamagata.yamagata.jp/yidff/entry2001/reg-jp.html
92年に亡くなった小川監督の追悼記事
http://cineaste.tripod.co.jp/cineaste/miner/920601_eisin.htm
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● 尾形さんが編集する『du Japon』は、ホームページと連動させ
た立体的な企画。まだはじまったばかりの「フリーペーパーLink」
にも期待できそうです。
『du Japon』のダウンロードもこちらから。
http://www.eigajyuku.com/Japon/
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☆ この話題についてのご意見ご感想、情報をぜひ掲示板に!
http://www.libro-koseisha.co.jp/top09/top09.html
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皓星社から

● 皓星社のホームページが4月からリニューアルします。
営業部からは「営業日誌(仮)」が登場。日々の営業活動でお世話
になっている書店さんをご紹介していく予定です。
お楽しみに!
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【編集後記】
● 朝日新聞夕刊に連載中の『官能小説家』を愛読しています。先
日、語り手が寿司屋で井伏鱒二と遭遇したというくだりがありまし
たが、著者の高橋源一郎氏はたしか中野区在住。井伏邸は杉並区に
あります。もしかすると、実話? ちなみに、小説のなかでは井伏
氏の勘定は安岡章太郎氏が支払っていました。

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