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ハンセン病資料館のいわゆる「不当解雇問題」について––––古い友人達とハンセン病問題に関心を持つ未知の友人に訴える

2020年9月29日

古い友人達とハンセン病問題に関心を持つ未知の友人に訴える

藤巻修一

現在、ハンセン病資料館が一部で問題になっている。

この問題は、2018年をさかいに表面化していること、その時を同じくして長いあいだ停滞していたハンセン病資料館の活動は重しが取れたように劇的に改善されていることから、僕はこの問題は現場の「改革運動」であると捉えている。現場の諸君を信頼し尊重すべきことだと考える。

いま欠けていて、欠けてはいけないのはこの現場から問題を見る視点であると思う。

現場の諸君は二つに向かって奮闘している。ひとつは、入所者が高齢化し激減しているなかで「隔離の被害者の資料は当事者が収集し保存していかなければ、将来ハンセン病の歴史は隔離を推進した側の資料で書かれることになる」という先人の問題意識を継承し、しかし一個の人間としてハンセン病問題にどう向き合っていくか日々の業務の中で模索しつつ、開館以来停滞したままの職場の「改革」を進めている。

僕は開館以来ずっとハンセン病資料館を見てきたが、初めから元学芸員が主導する資料館運営に対し現在のような改革の必要を感じてきた。しかし、資料館とは距離をおき傍観してきた。今、現場の諸君が行動している。それがどれくらい勇気のいることか、僕にはよくわかる。現場の諸君の起こした行動を見て、傍観者だった自分を恥じる。

一方で現場の職員は、周囲の思惑や無理解とも対峙しなくてはならない。改革には守旧派との摩擦が伴う。摩擦への対処が「最適解」だったかどうかは別な話だ。改革のなかで起きた「雇止め」を、守旧派が「内部告発した労働組合つぶし」といった労働問題にすり替え「改革」と「反動」を逆転させる巧みな手口と、運営する日本財団や笹川保健財団のイメージを利用したマスコミ受けする構図にまんまと乗せられた新聞報道や多くの善意の人々の誤解にも耐えなくてはならない。

学芸員たちは立場上声を上げることができない。「仕事」を通してしか主張できない。現在の資料館の活動が彼らの主張だ。それは、改革以前に比して劇的に改善されてきたことは客観的な事実ではないか。

この行動を見守って少なくとも邪魔はしないでやろうではないか。悪意や思惑があっての主張はともかく、善意の友人たちに訴えたいのはこのことだ。

 

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