2001.3.23 No17
■■■■■■■■■■■ 皓星社通信 ■■■■■■■■■■■■
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◆◆ 皓┃星┃社┃通┃信┃          ◇2001年3月23日号 No17◇
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隔週刊行(頻繁に増刊の予定ですが……)
                                    発行所 株式会社 皓星社
                  編集長    川尻 絵馬
                166-0004東京都杉並区阿佐谷南1-14-5
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【目 次】
 1.【阿佐ヶ谷歳時記】花暦             松本 純

 2.皓星社から
    
◎編集後記
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☆ だいぶ春らしくなってきました。皓星社のまわりでも、いろい
ろな花が咲き始めています。今回の【阿佐ヶ谷歳時記】は、弊社の
事務所がある杉並区内の早春の花を時系列でまとめた新趣向。読者
のみなさまがお住まいの地域では、そのころどんな花が咲いたので
しょうか。
 ちなみに前々回、「寒かったのでカゼをひいた」と書いたところ、
鹿児島の方から「ここのところ暑くて半袖を着ています」とのお返
事をいただいてしまいました。日本は広い!
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【阿佐ヶ谷歳時記】花暦                    松本 純

 異常に暖かかった昨年の1月に較べ、今年は月中に3回の降雪が
あり、早春に咲く花々も1週間ぐらい開花が遅れています。

1月15日  白梅(野梅)
梅、桃、櫻の類は、すべてバラ科サクラ属の植物なのですが、昔よ
り交配が盛んに行われているために、その園芸種は数多く、また、
植物事典なども、それぞれ取り上げている種がまちまちなので、と
ても1種類ずつ検討している遑はありません。
もともとは中国原産の植物なのですが、四世紀末に中国文化が伝来
した頃、漢方薬として梅の燻製が持ち込まれ、その漢音「烏梅(ウ
メイ)」が日本のウメ、ムメに転じたとされています。また中国で
は、梅と酸を同義にしており、「塩梅(エンバイ)」とは調味する
ことを指し、これが訛って日本の「アンバイ」となり、料理の味加
減ということになったのです。

  『古事記』や『日本書紀』には梅が出てこないそうですが、後の
『万葉集』には多く詠まれており、この時代に単に「花」といえば
梅の花を指し、これが櫻に替わったのは『古今集』以後のことなの
です。

『万葉集』第三巻
  あをによし寧樂の京師(ミヤコ)に咲く花の
   にほふがごとく今さかりなり
                    小野老朝臣(328)
  伊勢の海の沖つ白波花にもが
   包みて妹が家づとにせむ
                      安貴王(306)

  あしびきの山さへ光り咲く花の
   散りぬるごときわが王かも
                天平十六年甲申二月 大伴家持
  特にこの一首などは二月(旧暦)の作と判っているので、この花
は明らかに梅であるといえます。なお、同第三巻には、257、260に
櫻花が詠まれています。また同第五巻には、天平二年正月十三日、
大伴旅人の館で催された梅見の宴で一同が詠んだ梅の花三十二首が
載せられているのですが、俳句歳時記に描かれている梅の句同様に、
ほとんどが陳腐な歌の羅列といえます。昔から俳人のあいだでも、
梅と鶯は難しい題材とされているのです。数多の句の中から一句の
み描きます。

  たくあんの波利と音して梅ひらく   加藤楸邨

  零落や紅白の梅枝を交ひて   拙

1月25日 黄梅(オウバイ)
 バラ科の梅とは全く関係のないモクセイ科ソケイ属の植物です。
モクセイ科の植物は、だいたい花冠が四裂するのですが、ソケイ属
に限って花冠は五裂か六裂するのです。近隣種の黄ソケイは五裂し、
黄梅は六裂します。また二月の中ごろ咲く雲南黄梅は八重咲きのも
のもあります。中国では迎春花と呼ばれている如く、いかにも春を
迎える感じの花なのですが、白梅や紅梅に較べると、ほんの数句が
歳時記に取られている程度です。

  黄梅に佇ちては恃む明日の日を   三橋鷹女

2月1日 寒櫻(下井草5丁目)
 昨年は暖かかったので1月25日頃に開花しました。また別の寒
櫻(下井草2丁目)が2月25日に開花しましたが、この櫻は伊豆
の河津櫻(50年程前に山中で偶然に発見され、その後栽培されて、
今は観光名所になっている)と同種かとも思われます。但し、両者
とも手元の植物事典には載っていません。

2月5日 マンサク

2月10日 ウグイスカグラ

2月25日 サンシュユ
 山茱萸と書く中国原産のこの植物は、漢名の誤用ともいわれ、正
しい和名は春黄金花(ハルコガネバナ)です。それほど珍しい木で
はないのですが、都会地では「秋珊瑚(アキサンゴ)」と呼ばれる
真紅の美しい実が結実することは滅多にないようです。昔、わが家
の裏庭にも一本あったのですが、実が生ったのを見たことはありま
せん。最近では平成10年の秋に、本天沼3丁目にある二本が、ほ
んの2,3粒の実を結びました。

 2月に入ると、庭先や路端の草も、蕗の薹(フキノトウ)や福寿
草を魁として少しずつ動きはじめます。ロゼッタ状で土にへばり付
き越冬していた野草も、北風が当たらない日溜まりでは花茎を伸ば
し、早い草は2月の中頃から花を咲かせます。ナズナ、イヌフグリ、
ハコベ、スズメノカタビラ、ホトケノザ、タネツケバナ等の野草で
す。

【関連リンク集】
梅の花
http://village.infoweb.ne.jp/~fwgk0344/FLmenu_9903_05.htm
水戸偕楽園の梅 写真集
http://mtl.t.u-tokyo.ac.jp/~hiro/Slide/Flower/9803Mito-Kairakuen/9803M
ito-Kairakuen.html
春を告げる大阪の梅
http://www.keihannet.ne.jp/eisui/ume/ume2001-1.htm
オウバイ(黄梅)
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/BotanicalGarden/HTMLs/oubai1.html
河津桜
http://www.e-osakana.com/
サンシュユ(山茱萸)  
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/BotanicalGarden/HTMLs/sanshuyu.html

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「朝鮮新報」の読書コーナーに紹介されました。題して、「ライと
侵略の闇を暴く」。記事は朝鮮新報社のホームぺージでご覧になれ
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【編集後記】
● 杉並区に越してきて、はや4カ月。大邸宅が建ち並ぶ閑静な住
宅地(の木造アパート)に住んでいます。立派な木造建築の家々を
覗きながらの散歩を楽しんでいましたが、最近、風格があってお庭
も素敵だったお宅が2軒も取り壊されてしまいました。がっくりし
ながら更地を眺めて、びっくり。私の実家が10軒は建ちそうな広さ
なのです。どんな間取りだったんでしょう。想像もつきません。

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