2000.09.05 No3
■■■■■■■■■■■■ 皓星社通信 ■■■■■■■■■■■■
     
   ◇◆◆◇「皓星社通信」◇◆◆◇2000年9月5日号03◇◆◆◇  
 
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 隔週刊行(頻繁に増刊の予定)

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                   編集長 森田華子
                 166-0004東京都杉並区阿佐谷南1-14-5
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【目 次】     
1.『南天堂』群像探索記  ・詩誌「騒」同人  黒川 洋

2.皓星社からのお知らせ  ・『黒旗水滸伝』こぼれ話
             ・ホームページ大幅更新致しました
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詩人で『B級詩人のつぶやき』(皓星社刊・在庫あり)の著者黒川洋
さんに『南天堂』に出てくる人々を探索するの記をお願いした。
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  1.『南天堂』群像探索記
                      詩誌「騒」同人  黒川 洋

寺島珠雄さんの遺著、『南天堂 松岡虎王麿の大正・昭和』(1999)
に登場の人物に多田文三(ただ・ぶんぞう)という人がいる。
1903(明36)年11月6日〜1978(昭53)年7月13日、本名・多田康員
(ただ・やすかず)、筆名・多田白鳥、大阪市に生まれる。父は陸軍
佐官であった。

1918年頃、短歌誌『人魚の群』(大阪)の長崎謙二郎(別名 川路健・
京都生まれ/活動弁士後小説家)に誘われ白鳥名にて参加する。
21年東京第一外語学校独逸語科を経て東洋大学文科に入るが2年で
中退。
22年末、宝塚歌劇の脚本募集に「夢の牡丹」が入選するが、上演直前
の23年1月宝塚劇場の火事のため脚本もろとも日の目を見なかった。
23年秋、大震災後の白山上の南天堂へ、雑誌「紀元」創刊(10)の会
合に岡村ニ一、宵島俊吉(勝承夫)らと出かけ岡本潤、荻原恭次郎、
小野十三郎を知る。
24年石川啄木13忌記念歌会(千日前葦辺劇場劇場裏カフェークレナヰ
/人魚の群主催)河路青蕀(鍋山貞親)、春日庄次郎らと出席。同年
上京してきた長崎や久松勝(正二郎)と同人誌「東方芸術」を創刊の
予定であったが資金難のため挫折。
25年「紀元」の誌風に飽き足らず10月ダダ系アナキズム誌「ド・ド・
ド」を創刊(推定3号版画・岡崎龍夫)し西郷謙二、橘不二雄、奥村
秀男、伊藤和三郎、林芙美子、小野らが同人となった。

リーフレット「1926年芸術宣言」を撒布し、文学、演劇、美術、映画
のあらゆる芸術の分野に泥靴をつっこみ、ダダで日本の芸術を揺さぶ
ろうという旗印であった。

ダダ映画製作のため東京本郷から大阪に発行所を移し準備が整ったク
ランク・インの前夜、監督の奥村の急逝による不運が重なり挫折した。

他人の意表をつく反俗的行為を展開し、ドドドの二ツ名で文三と評判
をとった。

この頃「世界詩人」「太平洋詩人」「マヴォ」や「銅鑼」「文芸市場」
に寄稿。30年「文明批評」を高松すみ子、毛呂博明、安気正明、岡崎
と発行する。この後帰郷し33年詩誌「順風」に拠った。

43年再上京し、豊島区要町を経て63年草加市に居住。戦後は森林資源
総合対策協議会(林総協)に73年まで従事。その後、同会史編纂に当
たった。
47年第一次「コスモス」の人民的詩精神の主張に賛同し参加。
58年「文芸復興」創刊(落合茂 編集発行)に長崎らと拠った。

『近代日本社会運動史人物事典』には、多田文三と多田康員が別項目
(!)で立ててあり、本文記述は二行半、文献も二行半という内容で
ある。

多田文三の名は「コスモス」の古い号で目にはしていた。「文芸復興」
10集の〈随筆同人雑誌小史〉のトップに「南天堂書店」という多田の文
章はある。寺島さんは資料としてそれを引用している。そして同じく
多田の「心にビタミンを!」の所在を教示してくれたのは古本屋・月
の輪書林の高橋徹氏である。

雑誌「ド・ド・ド」は未見であるが、「文芸市場」(1926年3月)の全
国同人雑誌関係者一覧表にその誌名掲載されている。同人は多田、小
野、橘の3名が記載されている。

文三の二男・宋之助は、演歌グループ殿さまキングス(1967-90)の
多田そうべい(ギター奏者)として活躍、大人の寺子屋主催者でもあ
る。多田そうべいさんに聞いた、面白い話はまた次回。

『B級詩人のつぶやき』
四六判・並製・294頁 定価1,300円+税
http://www.libro-koseisha.co.jp/top03/rb1108.html

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[南天堂関係のリンク集]

●必見!!
三月書房〔南天堂の関係者のページ〕圧巻!
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/sangatu/nantendo.htm#「南天堂」

『南天堂』の著者故寺島珠雄さんの事務所
http://www.emp-t.cx/warera/index.html

アナキズム図書室
http://www.ne.jp/asahi/anarchy/anarchy/library.html

●登場人物
大杉栄
http://www.wbs.ne.jp/cmt/marco/rekisi/osugi.htm

荻原恭次郎(マヴォ)
http://www.shokoku.ac.jp/~knakazaw/toshi.html#hibiya
 
辻潤
http://www2.justnet.ne.jp/~etvi/TsujiJun/TJun.html#Refs

難波大助
http://www.angel.ne.jp/~mutuki/daisuke/daitop.html

林芙美子
http://www.pref.hiroshima.jp/sukoburu/vo13/hayashi.html
http://www.asahi-net.or.jp/~pb5h-ootk/pages/H/hayasifumiko.html

有島武郎
http://www.artpark.or.jp/ars_02.html
http://www.dnes.co.jp/walk/odori2/arishima.html
http://www.hamanasu.or.jp/tokusyu/shiribeshi/arishima2.htm

石川啄木
http://www.ne.jp/asahi/com/f/future/2000/no8-0003/art06.htm

竹久夢二
http://www1.ocn.ne.jp/~nagao.s/sabpage5.htm

●時代背景
関東大震災における朝鮮人虐殺について
http://www1.ocn.ne.jp/~sinryaku/tyousen3.htm

社会主義運動
http://www.st.rim.or.jp/~ikita/SA/these0.html

高崎と新思想
http://www.city.takasaki.gunma.jp/ad/adb/adb12/adbc0009.htm

●ダダ、ロシア・アヴァンギャルドについて
Art Words -現代美術キーワード  
http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/artscape/artwords/k_t/mavo.html

ダダ
http://www1.sphere.ne.jp/mtg/contents/bijyutuyougo.htm
http://www.dnp.co.jp/museum/kawa/page1/j1coments02.html
http://www2u.biglobe.ne.jp/~artbooks/modernism_a.html
http://www4.justnet.ne.jp/~s.yokota/RUMA.HTM
http://www1.kcn.ne.jp/~ksmail/dadaist.html

シュルレアリスム
http://db3.ntticc.or.jp/g/archive/data/articles/T0h00236.htm
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☆さらに詳細なリンク集をHPに掲載の予定です。
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皓星社からのお知らせ
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●『黒旗水滸伝―大正地獄篇―』こぼれ話

竹中労 著・かわぐちかいじ 画
 A5判・並製・上下巻・各巻平均570頁 定価各2,500円+税
http://www.libro-koseisha.co.jp/top05/rb1132-33.html

☆取次ぎは何を考えているんだろう。
ついに刊行。8月の24日が取次の見本出し。次の日に部数の確認をす
るためにトーハン・日販に電話。トーハンは委託で800とるという。
日販は100という返事(100だって、100!)。

「ええっと、すいません、もう一度部数の方を……」
「100部でお願いします」
「100って……、100部ですか?」
「はい、そうです」
「……」

電話を切った後、しばし茫然。気を取り直して電話をかけ直す。
「どうしてそうなるのか理由をきかせてもらえませんか」
「あぁ、つまり全体として返品を減らそうということでこういう数
にならざるをえないんですよ」

返品を減らすには、仕入れないという理屈。それで、ビジネスマンか
ね。それにしてもこの部数?
「それは担当者の判断とそれを受けての会議の決定ですからね、まぁ
今回はこれでお願いするとして、次回以降は御相談ということで」

「『まぁ、今回は……、次回は……』だってぇ!?  わしら一冊一冊に
命賭けとるんじゃい」とは、それを聞いた編集部原島の弁。(原島は
25歳、女なんでございますよ)

それにしても、はたと気づけば日本全国に配本される膨大な数の書籍
は、僅か数名の取次窓口担当者によって決定されるという恐ろしい状
態なのである。

取引格差、経費の負担強要(そうでないといっても、そう感じるんだ
から、セクハラと同じ)をしながら、このありさまでは、昨今の問題
も仕様がないのかも。

☆後日談
搬入後、紀伊國屋書店さんから「入ってすぐ売り切れたから大至急20
セット入れて」とか電話が鳴りっぱなし。それもほとんど日販さんが
仕入先のお店。「ざま・・ろ」とは言わないけれど、溜飲が下がった
のは確か。仕入れ窓口の方も、前述したように数千の版元、数万の書
籍の生殺与奪の権を握る、全取次合計しても、わずか数十人という存在。
それならそれで天晴れ目利きと言われる仕入れのプロを目指してほし
いもの。

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●ホームページ大幅更新

9月1日ホームページを大幅リニューアル致しました。

皓星社では、図書館様の画像データの作成や公開についてお手伝いさ
せていただくため、最新の画像圧縮システムの導入、先端技術を持つ
ベンチャー企業との提携を進めています。このため、すでに所蔵の貴
重資料の公開を進めている諸機関様の画像データの作成方法、公開方
法の調査・研究用に、対象を(1)画像データであること、(2)表紙や内
容の一部ではなく、全文が閲覧できるもの、に限って検索エンジンを
作成しました。

これを、試行版として公開いたします。
公開された画像データが、データベース名ではなくタイトルレベルで
検索できます。

内部用に作成したもので、不行き届きがあるかもしれませんが、ご支
持が得られればこのまま公開・データの補充を行っていきたいと思い
ます。

皆様の御意見御感想をお待ちしております。

http://www.libro-koseisha.co.jp/top12/top12.html

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 編集後記
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 9月になり、やっと秋らしさが感じられるようになりました。食欲
の秋、芸術の秋そして読書の秋。それが幸いしてか、御蔭さまで9月
1日発売から3日間で『黒旗水滸伝』の追加の電話が鳴り響く社内。
実に幸せです。
 軍事演習もどきに時間とお金を費やし、右翼団体を勢いづかせる東
京都知事。こんな時代だからこそ、無政府主義者の思想が大切なのか
もしれません。同人誌「虚無思想研究」は、南天堂の著者寺島氏の特
集です。その反権力的な生き方に胸打たれ、憧れる今日この頃です。

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